‘16年7月発売のファイナルエディションを最後に生産が終了したW800。その流通在庫がまだあると聞き、あらためて試乗してみた。
目次
【〇】この鼓動感は唯一無二 バイクの原点がここに
’99年2月に発売されたW650は’09年モデルを最後に生産を終了。その2年後の’11年、ほぼ姿を変えずにボアを5mm拡大し、燃料噴射を採用したW800がリリースされた。十分な性能を維持しつつ来たる排ガス規制をクリアできないことから、’16年7月発売のファイナルエディションを最後にW800も生産終了となったが、うれしいことにまだ流通在庫が入手可能という。いつかはダブルなどと考えていた人にとっては朗報だろう。
まずはエンジン。ロングストロークの773cc空冷並列2気筒は、圧縮比が8.4:1と低く、48psと控えめな最高出力を公称する。ミッションは5段だ。排気音は確かにツインだが、バランサーを組み合わせているおかげで極端な振動はほとんど伝わらず、精度の高い重量級のクランクがスルスルと回っている様子が目に浮かんでくる。2500rpmで最大トルクを発揮するため、大きくスロットルを開けずとも十分な加速力を見せ、高速道路の巡航も余裕でこなす。また、低回転域から力強く立ち上がれるので、峠道ではシフトチェンジを少々サボってもそこそこのペースで走れてしまう。燃料噴射のレスポンスは穏やかで、ライダーを慌てさせる反応は一切なし。上品かつ味わい深いエンジンである。
ハンドリングは、フロント19インチ/リヤ18インチという大径なホイールと、27度と寝かせ気味のキャスター角、そして柔軟なフレームにより、オフロード車のような挙動を見せる。高剛性なモデルから乗り換えると戸惑うかもしれないが、常用域においては何ら不足なし。慣れてくるとバンク角の少なさをうらめしく思うほど、ワインディングを走るのが楽しくなってくるはずだ。ちなみに、ホイールトラベル量はフロントが130mmと長めなのに対し、リヤは106mmしかない。高速で大きなギャップを通過した際に底付き感が出ることもあるが、常用域ではむしろ乗り心地がいいと感じられる。
試乗したファイナルエディションは、タンクの塗装をはじめ各部の仕上げが美しく、眺めているだけでも心を満たしてくれる。こんな作品はもう二度と出ないかもしれない。
【×】ブレーキ、車体ともに限界性能は高くはない
ブレーキの絶対制動力はそれなりなので、前後を同時に操作するのが基本だ。また、車体の限界性能も決して高くはないので、峠道で飛ばしすぎると慌てる羽目に。慈しみながら流すのが最も似合うバイクだ。
【結論】素材の良さが味わえる最後のチャンスかも
復活の噂も聞こえてくるW800だが、新しい排ガス規制をパスしながらどこまでこの味わいを維持できるかは未知数。素の単車らしさを残した稀有なモデルであり、また長寿なだけにカスタムパーツも豊富。欲しい人は早めにお店へ。
写真:飛澤慎
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Source: WEBヤングマシン