長らくカワサキのミドルクラスを担っていたER-6n。’17年にフルモデルチェンジしZ650を襲名した。ニンジャ650のネイキッド版、その走りやいかに。 ※ヤングマシン2018年9月号(7月24日発売)より
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【〇】従順なエンジン特性
649㏄の水冷パラツインを搭載するER-6nがメインフレームを一新。特徴的だったリヤサス(リンクレスのオフセットレイダウン)はリンク付きのホリゾンタルバックとなり、車重は19kg(!)もダウンした。この大がかりなモデルチェンジと合わせて車名を〝Z650〞としたのが昨シーズンのことで、今年は車体色を変更。個性的な白が廃止となり、イエローが新色として用意された。車重はZ250が170kgを公称するのに対し、Z650は187kgしかない。しかもライポジは非常にコンパクトで、足着き性も抜群にいい。排気量を示す数字は小さくリヤカウルに入るだけだから、初見だと「650㏄もあるの!?」と驚くに違いない。
特に6000rpmまでの低中回転域を扱いやすく改善したという水冷並列2気筒エンジンは、最高出力こそ70.7psから68psへと微減。だが、車重が8%もダウンしたので、パワーウエイトレシオではむしろ有利になっているのだ。3000rpm以下ではささやくような鼓動感があり、そこから6000rpm付近までは爽快に加速。そして、レッドゾーンの始まる1万rpmまで淀みなく伸び上がっていく。回転域ごとにさまざまな表情があり、しかもスロットルワークに対するレスポンスが過度に感じない範囲で忠実など、よくぞここまで仕上げてきたな、という印象だ。
【〇】素直なハンドリング
ハンドリングはさらにいい。基本的にどんな乗り方でも曲がれるという懐の広さや安心感があり、さらに正しく荷重すると目の覚めるような旋回力が引き出せる。つまり、ビギナーだけでなくベテランもそのポテンシャルに酔えるのだ。フレームは単体で8kgも軽くなっているが、剛性不足は一切感じられず、前後サスと合わせてしなやかに路面を捉えている印象だ。なお、フロントブレーキのキャリパーはピンスライドの片押し式2ピストンだが、下り勾配のきつい峠道でも特に不足は感じられず、またボッシュ製ABSユニットの作動性も特に不満はなかった。
普段使いしたくなる気軽さと峠道でのファンな走りが同居する秀作であり、純正アクセサリーが豊富な点にも注目を。
【×】ニンジャとの差額2万円、ライバルより高めだ
フルカウルの兄弟車であるニンジャ650との差額が約2万円しかないため、やや割高感が。加えて、直接のライバルであるヤマハのMT‐07やスズキのSV650 よりも高く、このカテゴリーで何を買おうか迷っている人にとっては価格が不利になりそう。
【結論】鋼管フレームの勘所をつかんだカワサキ強し!
先月号で試乗したZ900もそうだが、カワサキは高張力鋼管トレリスフレームの勘所をうまくつかんだのか、ハンドリングがとにかくいい。このカテゴリーは優良車がひしめきあうが、デザインも含めてかなりいい勝負をするだろう。
撮影:飛澤慎
ニュース提供:ヤングマシン2018年9月号(7月24日発売)
Source: WEBヤングマシン