商品の特徴が理解されにくい車種にパジェロがある。
1991年発売の2代目はヒットしたが、1990年代の中盤以降は、RAV4、CR-Vなど前輪駆動をベースにしたシティ派SUVが台頭。それに伴ってパジェロは人気を下げた。
不人気になった原因として、シティ派SUVに比べるとボディが大きくて価格も高く、運転感覚には重さが感じられたことがあった。 その代わり駆動力を高められる副変速機を備えた4WD、耐久性の優れたシャシーと足まわりによって悪路走破力が高いが、日本では悪路といっても雪道程度が主。パジェロの性能は宝の持ち腐れになってしまう。 結果、販売は低迷し、現行型は発売から約12年を経過したから、ますます売れ行きが落ち込んでいる。 しかし、パジェロは、第二次大戦直後にノックダウン生産を開始した三菱ジープの伝統を受け継ぐ。トヨタのクラウンに相当する三菱の基幹車種だ。 そして悪路走破力が抜群に高い。3.2Lのクリーンディーゼルターボも、実用回転域の駆動力が優れ、悪路に適した性能を発揮する。
人気回復の手段は、新型ジムニーと同様、初代モデルの考え方に戻ることだ。
初代パジェロの3ドアは、新型ジムニーに似たシンプルで機能的な美しさによって人気を高めた。 今になって思い返すと、パジェロは代替わりごとに、コンセプトが曖昧になっていった。初代は多くの人達に4WDの楽しさ、カッコ良さを味わって欲しい気持ちをストレートに表現したが、次第に高級に見せたい意図が強まって肥大化している。 今後のパジェロに求められるのも、プロに向けた実用車感覚を取り戻すことだ。新型ジムニーがなぜ人気を得たのか、パジェロの商品企画担当者はしっかりと研究すべきだ。
渡辺陽一郎
Source: 新車速報 Car Drive