外観の全面刷新で09風のルックスを得るなど、見た目のリニューアルが目を引く新MT-07。しかししかし……コイツは旧型07から見ればMT-07″SP”と呼びたいほどの能力を得ていた! ※ヤングマシン2018年6月号(4月24日発売)より
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外観は同じでもFフォークはまるで別物
MT-09SPはSTDの持ち味そのままに対応領域をサーキットまで広げていたが、新MT-07もこれと同じようなコンセプトで非常によく仕上がっていた。これまでの07は柔らかい足まわりでカジュアルにストリートを楽しめるのが持ち味だったが、新07は基本的にこれを踏襲しつつも、新たにスポーツ領域のカバー範囲を広げたのだ。エンジンはユーロ4対応になったが、73㎰とスペック上は同じで、実際に乗ったうえでも印象はまったく変わらない。相変わらず270度クランクの小気味いいトルクに元気の良さが組み合わされた楽しいエンジンだ。だが、跨ってみるとサスの沈み込みに落ち着きがあり、最初から高級なパーツに変わったなという感じをアピールしてくる。基本的なライポジは変わらないものの、足着き性のために極端にシート前方を絞っていた従来型に対し、新型は快適性向上のため座面を広げている。足着き性はわずかに悪化したが、大きな問題ではないだろう。
走り出してみると、その足まわりのクオリティ向上はすべての面において顕著だ。伸び側ダンパーの調整機構が加わったリヤサスもさることながら、際立っていたのがフロントフォーク。外観は旧型と同じだが、内部のバネレートとダンピングが改良されたそれは、サスが入り込んだその先に新たな奥が生まれており、ストリートでギャップを通過するうえでも、そしてブレーキングするうえでも、ワンクラス上の質感を感じさせてくれる。もっともブレーキング時の違いを実感させてくれたのが、サーキットで試した超高速域からだった。旧型はコーナリングの前ですでにサスが入りきっているような状態だったが、新型では奥が残っており、さらにブレーキでサスをスッと縮めて攻めることができるようになり、踏ん張り具合が段違い。しっかりタイヤを押さえつけらえるからグリップ感も高くなる。本来のフレンドリーさを変えず、より攻められる部分も手にしているのだ。
ただでさえ楽しかった07が、より幅広いライダーを満足させてくれるようになった。同じ外観のフロントフォークでここまで違うかと驚くこと請け合いだ。しかも新07のすごいところは、品質の向上に対し、価格アップは約1万7000円に抑えたこと。新生MTシリーズは累計で14万台(’13年にMT-09登場後の欧州での台数)を販売したという。売れているから、価格を抑えてもいいパーツが使える。ユーザー還元的な部分もあるのだろう。 ※テスター:丸山浩
まさに絶妙! 新07の前後サス
外観上は先代と同じながら、内部のバネレートが6%、減衰力を16%高めに変更したフロントサス。リヤショックはSTDのMT-09と同じタイプの新型で伸側減衰の調整機構を新たに装備。こちらはバネレートが11%、高速の伸側減衰が27%、高速の圧側減衰が40%高められている。これによってMT-07はカジュアルから、ちょっと本気で走りたいベテランまで幅広い層をカバーした。なお、装着タイヤもミシュランのパイロットロード3から4へと進化した。
外観リフレッシュに加え走りの充実も図る
欧州でのユーロ4対応を兼ねてモデルチェンジとなった’18MT-07。より力強さを感じさせる方向にした外装と、前後サス改良によるパフォーマンスのアップ、新シートでの快適性&操縦性向上が図られた。そのシート高は805㎜で従来から変わらず。従来はABSなしも選べたが、’18からはABS車のみとなる。
【INTERVIEW】「”よりMTらしく”がコンセプトです」
初代の完成度が非常に高く、どこまで変えていいのか難しかったのですが、長所はキープしながらさらなるMTらしさを狙いました。従来型は積載時やタンデム時にサスが若干頼りないとの意見もあり、新型はバネレートと減衰力を高めにセッティング。トレーサーをシリーズ化してキャラクターを分けられたため、MTはややスポーツ指向に振っています。外観については、発売当初よりMTというブランドの定義が明確になったため、09との共通性を強調。よりマッシブなイメージに振りました。また、シート座面の面積を拡大したことで、やや前乗りが可能になり、ライディングの自由度も上がっています。こうした乗り味の面も09との共通性を意識しました。 ※新型MT-07プロジェクトリーダー吉田貴幸氏
テスター:丸山浩
まとめ:宮田健一
撮影:長谷川徹
ニュース提供:ヤングマシン2018年6月号(4月24日発売)
Source: WEBヤングマシン