5月27日(日)に千葉市幕張海浜公園で、レッドブル・エアレース2018 千葉大会の決勝が開催された。当日、海からの風は穏やか。だが、徐々に強くなる予報が出ている。
【ラウンド・オブ・14】
ノックアウト方式の対戦で、各Heatの勝者7名と敗者の最速1名が敗者復活でラウンド・オブ・8へ勝ち上がる。
【Heat1】クリスチャン・ボルトン vs ピート・マクロード
ボルトン選手、翼とボディカウル接続部の改良に加え、テクニシャン西村氏が強く意識する「機体バランス」のとれた機体で安定した飛行を見せ57.003と予選タイムを0.17秒削る。対するマクロード選手は、ゲート6からハイGターン(ゲート7〜8)の旋回をコンパクトにまとめるとここで1秒近い貯金を作り、56.191で逃げ切った。
【Heat2】ニコラ・イワノフ vs マティアス・ドルダラー
イワノフ選手、ノーペナルティで飛行して、57.671。一方のドルダラー選手はハイGターン後のスラロームで差をつけた。56.688という予選タイムにも迫り、ラウンド・オブ・8に勝ち上がる。
【Heat3】マルティン・ソンカ vs ファン・ベラルデ
お互いをリスペクトしている両選手。2戦続けて機体(エンジン)ペナルティを受けているソンカ選手、調整動作の少ないスムースな飛行で56.688と予選タイムを0.23秒上回る。ベラルデ選手も56.722と0.13秒削ったが、0.37届かず。ベラルデ選手は敗者復活の最上位となり、後続を待つ。
【Heat4】マット・ホール vs 室屋 義秀
ホール選手、ここで本大会のファステストラップ55.529を叩き出し室屋選手にプレッシャーを掛ける。室屋選手が移動中に知らされたマット・ホールのタイムは、室屋陣営の予想より1秒速かった。しかし、体調も機体も調子が悪くなかったので、勝つことしか考えていなかった。
そしてVTMの引き起こしの際に、エレベーター(水平尾翼の可動部分)を0.2〜0.3度余計に動かしてしまった。結果、最大12.4Gを記録し即時DNF。室屋選手の千葉での初戦敗退は4年目にして初の事であった。決勝当日垂直尾翼を交換した事で筈かに機体のバランスが変わり、競技会場までの飛行の際に体が補正を掛けてしまい、VTMの引き起こしの際、操縦桿を僅かに大きく引いてしまったのではなかろうか。
【Heat5】ペトル・コプシュテイン vs ミカ・ブラジョー
ペトル選手56.864と自己の予選タイムを超えるタイムを記録する。しかし、ブラジョー選手は2つ目のTVMで頂点からコンパクトに回り、降下Gを使った素早い加速で56.693と僅差で突き放した。
【Heat6】フランソワ・ル・ボット vs カービー・チャンブリス
予選13位のル・ボット、自己の予選タイムより速い56.703で飛行すると、予選2位のカービー選手は最初の区間で後れをとる。そして、ハイGターンの侵入でインコレクトレベルのペナルティ:+2秒。挽回して58.567でフィニッシュ。1.884もの差がついてしまう。予選の時、ペナルティ抜きだと0.8秒しかない2位と13位のタイム差。ミスは絶対に許されない。
【Heat7】ベン・マーフィー vs マイケル・グーリアン
公式練習では10位-7位-12位とルーキーとしては健闘していたマーフィー選手だが、予選タイムはペナルティを抜いてもグーリアン選手と2.5秒以上の差がある。このラウンド、自己ベストに迫る57.560を記録するが、2秒:ペナルティ1回分のタイム差は今のグーリアン選手に充分な余裕。ハイGターンまでは僅差だったが、そこから引き離しで56.422。グーリアン選手が勝ち抜ける。予選上位の選手が3名も敗退する波乱は最近にない展開となった。
【ラウンド・オブ・8】
およそ1時間のインターバルを挟み、ラウンド・オブ・8が行われる。ラウンド・オブ・14の開始時には気にならなかった風が少し強くなる。
【Heat8】マティアス・ドルダラー vs マイケル・グーリアン
実は時差ボケと風邪気味でハンガーでの表情もやや冴えなかったドルダラー選手。1度目のVTM直後ゲート4通過時の高度違反(TooHigh)と、 ハイGターン前のゲート6でインコレクトレベルと2度(+4秒)のペナルティで59.845。グーリアン選手は4秒の貯金を使いエンジン負荷を掛けずに57.515。2.33差で勝ち上がる。
【Heat9】ミカ・ブラジョー vs マルティン・ソンカ
昨年デビューのブラジョー選手、ラウンド・オブ・8進出は珍しくなくなったが、突破は未だ無い。今では唯一となったMXS-Rはモノコック構造の機体で軽量などの改造は難しい。が、スラロームではしなる主翼が武器となり、タイムを稼ぎ出す。56.694と自己ベスト近いタイムを刻むが、ソンカ選手は56.132と今日イチのタイムをここで叩き出した。
【Heat10】フランソワ・ル・ボット vs ピート・マクロード
ル・ボットは果敢に攻めるが、ハイGターンの際に小回りをし過ぎた事でスピードを殺してしまい、57.226にとどまる。マクロード選手は手を抜くことなく56.002とこのラウンド最速のタイムで勝ち上がった。
【Heat11】ファン・ベラルデ vs マット・ホール
ベラルデ、スラロームでリズムが悪く機体が上下してしまい57.578にとどまる。2回目のVTMで失速気味となり伸び悩む。ホール選手はスラローム部分の繋がりが良く、56.29 とベラルデ選手を大きく引き離した。
【ファイナル4】
風の強さはあまり変わらないが、気温が下がる:空気抵抗の低い機体の選手がより有利になる。機体の開発が進んでいるといわれている4名(機)の中では、マクロード選手にとっては一層の無理を強いられそうだ。また、飛行はラウンド・オブ・8の勝ち抜け順なので、前に飛ぶ選手の方が有利といわれている。
グーリアン選手、3戦連続ファイナル4進出の安定感を見せて56.695で暫定トップに立つ。ソンカ選手、序盤リードしながらもハイGターン前のゲート7でインコレクトレベル!これではグーリアンを越えらない。58.443で2位につける。
マクロード選手、ゲート7で動きだしが早過ぎ、インコレクトレベル!ソンカ選手も越えられず58.639。グーリアン選手の2位以上、ソンカ選手の表彰台が確定。不利と云われる最終飛行者ホール選手、乾坤一擲のフライトはハイGターンだけで0.8秒近いタイムを稼ぎ出し、56.376で逃げ切った!
ホール選手にとってはカンヌに続いて2連勝でチャンピオンシップでトップに立った。また、通算6勝目で室屋選手(5勝)を抜いて、現役2番目の勝利数である。過去に室屋選手が「2人の怪物」と呼んだうちの一人。16年末の不翻意な機体乗り換えから1年。遂に怪物が覚醒した(もう一人の怪物は最多勝で現解説者のポール・ボノム氏)。
2位のグーリアン選手は開幕戦の優勝の後、2戦連続での2位。チャンピオンシップのトップは優勝回数でホール選手に譲ったが、ポイントでは36で並び依然としてポイントリーダーの座を死守している。
室屋選手はノーポイントだが、3位を守った。但し、昨年最期迄チャンピオンを争った最強のライバル、ソンカ選手が同ポイント(19pts)で並んだ。
次戦は、6/22,23ハンガリーのブダペスト。ドナウ川上に掛かるセニーチェ鎖橋の下をくぐってスタートする伝統のコースで開催される。
(川崎BASE)
あわせて読みたい
Source: clicccar.comクリッカー